芳醇なる黄金の液体

アチェート・バルサミコ

“ジュゼッペ・ジュスティ”

北イタリア、エミリア・ロマーニャ州の中世の都市モデナからレッジョ・エミリアにかけて、古くから伝わる伝統的な酢。あえて訳せば「芳香酢」ですが、酢というよりはむしろ調味料の一種としたほうが適当でしょう。

アチェート・バルサミコは「公爵の酢」「黄金の液体」「調味料のキャビア」など世界で最も高価で気品のある酢と言われ、このように様々に呼ばれてきました。 その艶やかな暗褐色、とろりとしたシロップ状の濃度、かぐわしい花の香りとまろやかな甘味。同じぶどうを原料としながらも、いわゆるアチェート・ディ・ヴィーノ(ワインヴィネガー)とは全くその質を異にします。

 その起源は古く中世までさかのぼります。この一帯を支配していたエステ家の年代記に、1046年アチェート・プレスティージョなる高価な酢が登場します。その時代にはこの特殊な酢が作られエステ家によって管理され、パリやモスクワを初めとする他の公国の国王や公爵らに贈物として贈られた他、モデナを中心とする上流階級の専有物として伝えられてきました。この特殊な酢が知られるようになったのは最近のことで、未だにイタリアでさえ一般的ではなく、この地域の特有な酢で、またイタリア料理書にも見出すこともほとんどありません。

 原料はトレッビアーノ種というこの地方特産の白ブドウで、甘味が強いのが特徴です。これを潰し麻袋に入れて自然に漉します。取出したブドウ液を直ちに銅鍋に移し、細心の注意を払って半分にまで煮詰めます。これを静置して冷まし、滓を除き樽に移して熟成に入ります。熟成中は、毎年材質の違う樽(樫 桑 栗 桜 ネズ等)に移しかえられるトラヴァーゾが行われますが、この熟成工程が最もアチェート・バルサミコの特徴的なものです。熟成中、樽に吸収されたり蒸発したりして減量した分を、この一年ごとのトラヴァーゾの度に少しずつ小さな樽に移しかえられ、10年から15年長いものでは100年と熟成されます。

 “ジュゼッペ・ジュスティ”の歴史的なアチェタイア(熟成室)は1605年から続く最古のもので、以前はモデナの中心街の古い建物の中にありました。現在はこのアチェタイアとともに郊外に移転し、保存されています。